JRの日勤教育は罰操作か?

 だいぶ前になって恐縮ですが、茶そばさんからの質問です。
『こないだの授業でずっと疑問に思っていたのですが、JRの日勤教育は負の強化なんですか?罰を受けないように行動を減らそうとするから正の罰とは言えないのでしょうか? 正の強化とか負の罰とか、言葉の理解はできますが、違いがよくわかりません…』

 はい。大変重要な質問です。ざぶとん1つ。授業中にもこの質問をとりあげてお応えしましたがここでも確認しますね。
 授業中に、(正・負)×(強化・罰)=4種類の随伴性の操作についてお話ししました。大事な事は、その操作の「意図」と「結果(効果)」を分けて考えること、そして効果の点で考えることが業務用心理学としての行動分析学の重要なことであると言いました。
 さて、JRの日勤教育は、仕事上のミスに随伴して行われました。操作意図としては「ミス行動」を減じるために嫌悪的な環境変化を提示するという「罰」操作だったわけですね。
 一方、ミス行動をしないということは、逆に正しい行動を維持・拡大しなくてはならないということでもあります。日勤教育といった操作の意図は、あくまでも運転士さんたちをして、嫌悪刺激を避けるために「正しい行動」を維持させるという意味で「負の強化」の操作であったともいえるわけです。
 罰と負の強化はほとんど表裏一体の操作であるといえます。そして一定にその効果もあったという点では、罰操作であり負の強化であったといえると思います。
 しかし、罰と負の強化を意図した統制、つまり嫌悪刺激の提示やその予告をもとにした方法では、ミス行動が(完全には)なくならなかったことを証明したのが今回の事故です。それどころか、嫌悪的刺激を使う罰や負の強化で統制されているJRの労働状況は、「失敗をかくす」行動や、予期される嫌悪的刺激の提示によって引き起こされる様々な非適応的な行動(あせったり、ぱにくったり)を出現させ、事態を悪化させ大惨事にまで発展してしまったというわけです。