前の回の院生君へのレス

marumo552010-10-15

 前回の日記の院生1回生O君の鋭い質問に、半分眠った回答してたみたいなので、改めてここに。

 >研究者の随伴性の中に『援護』維持する機能が十分含まれていない,実行してもしなくとも見過ごされる(消去)ほどの要望に基づくものということはわかりました。いっとき説明責任(アカウンタビリティ)という言葉が流行りましたが…
 >『援護』とは要求言語行動であることもわかりました。そうすると,我が研究の社会的有用性の根拠・重要性を社会が納得できるように,そしてその投資を得られるように説明する為には,聞き手である行政や一般の人にもわかる言語で話さないといけないことになります。対人援助学はこれを含まなければいけないように思います。(前述のアカウンタビリティの為にも)

 おっしゃる通りです。応用行動分析という学範が実験的行動分析と違う点というのは、研究の対象でも手法の厳密性でもなく、「聴き手」が当事者の行動に直接・間接に関わる関係者ということにあると思います。
しかし関係者といっても色々です。行政かも知れないし企業かも知れません。一般の人かも知れません。人の行動を変えるための行動としては、実は、映画であったり、歌であったり、演劇であったり、というふうに色々考えられます。マンドとしてつまりは言語行動の表現としても、単行本であったり論文であったり、もちろん学会発表もあります。
一番、誰でもが参加できる、誰でもが表現できるものは何か。それは論文だと思います。演劇よりも歌よりも映画よりも、特別の才能は必要としません。誰でもが参加できるのです。というのが、今度、「対人援助学会」のワークショップ(11月6日)でやる「学会を100倍楽しむ方法」の趣旨です(このタイトルは実は20年くらい前に特殊教育学会で加藤哲文先生の企画でやりました。あの時は10倍だったけど今度は100倍)

>また,被援助者・それを取り巻く環境にある既存の強化随伴性をぶっ飛ばす作業,反応を減少させる操作も対人援助学に必要だと思います。

 「ぶっ飛ばす」というのがいいですねえ。

>そうすると変化抵抗(定常状態となったオペラント行動に,反応を減少させるような操作が加えられた場合のオペラント行動の現象の割合)があるでしょう。変化抵抗の制御変数はいくつか先行研究であげられていますが…   え、と。是非具体的論文名を紹介してください。

>援護を記述するための研究として変化抵抗に着目することに先生はどう思われますか?
 
 着想としてはいいと思います。「変化抵抗」ということについて私がどれだけ理解できているか、はなはだ心もとないんですけど、対人援助的実践において、援助、援護、教授という3つの作業連環の中で、一番大変なのは「援護」なんですよね。変化抵抗とは、その文脈でいえば、マンドへの対応行動、つまりはマンドを成立させる強化行動を疎外する要因として挙げられると思うのですが、「ぶっとばすマンド」というのは、抵抗というか簡単にカウンター食らいますからね。そういう意味ではひとつの援護の戦略として、この研究の意義はあるかも。