休講追加と,においの話

 すいません.休講の追加です.先に海外出張による行動障害心理学などの休講をこのブログにも載せましたが,25日の研究入門および24日と12月1日の演習ゼミも休講となります.ご迷惑をかけてすいません.ゼミ4回生の諸君は卒論も間際なのでそれまでに質問等をしておいてくださいね.
 
 過日,カメムシ話題から問題に出した「においと記憶」の解説をします.
 レスポンデント条件づけにおいて,いったん学習した組み合わせ(つまり条件刺激によって条件反応が出る)が解消する場合には,
1)その組み合わせ自体が自然消滅する場合と,
2)当該の条件刺激に別の新たな刺激が結びついて前の反応が出なくなる,
 という2種類が考えられます.
そして,1)は,めったにない(自然消滅はしない)という原理をまず覚えておいてください.
 つまり,当該の刺激のもとである条件反応が出なくなる(忘れちゃう)というのは,その刺激に新しい反応が,時間経過の中でどんどん結びついてしまうことによるものです(「よごれちまった思い出」(?)).
 そして,今度は「におい」に関することですが,この「におう」という臭覚というものは,視覚や聴覚の場合と違って,再生することが非常に難しい(っていうかできない).音楽を想起したり情景を思い浮かべることは当該の刺激がなくてもできますが,「あの匂いを,今,思い出してみろ」と言われても再生できないですよね.これが第二の原理.
 以上2つの原理を合わせて考えてみると,あるユニークな匂いとある情景(あるいはそのもとでの情緒反応)が連合した場合,時間経過の中で,減衰していくことはあまりないということになります.別の情景や環境の中で,その匂いを再生して「思い出を汚す」機会というものが,視覚や聴覚の場合にくらべて全然といっていいほどないからです.もちろん,当該の匂いを,時間経過の中で何回も実際に嗅ぐ機会があれば,最初に嗅いだときの感興は薄れてしまうのはもちろんのことですが.
 私の場合,大人になってから,デパートのエスカレータで上っているときに,交差しているくだりのエレベータの人からある匂いがして,その瞬間,幼児のときに田舎で雨戸の板の上で盆踊りを踊った,というその瞬間の情景が目の前いっぱいにひろがった,という経験があります.その匂いは,後でいろいろあたってわかったのですが,「はっか油」という,虫さされ用のスティックの匂いであることが判明しました.これってあんまり都会では売ってないですよね(タイガーバウムに近い匂い).ですからそれにまつわる思い出も,その時点まで「汚れずに」残っていたというわけです.わたくし,シチーボーイですから.
 このタイムワープのような体験をしたとき,つらつら,考えたのが上記したようなレスポンデント条件づけの原理だったというわけです.
 懐かしい言葉,なつかしい情景,懐かしい匂い,これを3つ並べてみると,一番ぐっと来るのは,やっぱ匂いじゃないですか?
 香水とか,けっこう重要なアイテムかもですな.ただしユニークな匂いをカスタムメイドで自分用に作る必要があります.
 で,どう使うか,と考えると,あまり意味ないか ( _ _)

ふられた後でも,ずっと後になって,相手がその匂いを(偶然に)嗅いだときに,自分のことを思い出してもらう・・・その程度か.

 パクチー食べたら,幼稚園の遠足のとき転んだときの情景を思い出す.ま,それも,だからどうしたという話ですが・・・