ひらめき☆ときめきサイエンス

marumo552006-01-14

 

 文部科学省独立行政法人日本学術振興会の企画による科学研究費補助金による研究の地域公開を目的とした「ひらめき☆ときめきサイエンス:ようこそ立命館大学文学部『心理学科』へ」(携帯電話を用いたコミュニケーションのバリアフリー)のセッションが、14日に行われました。
 近隣の公立・私立の高校生が12名(および父兄2名,学校関係者1名)が参加し,座学(受講)および実習を行いました.その概要は

Ⅰ.講義 
1. 携帯電話を用いたコミュニケーションのバリアフリー
1)対人援助(=手伝う)という枠組みの中で,コミュニケーション(その個人が何を望むかを伝える)ことが大切である,
2)コミュニケーションで大切なことは,人ひとりひとりが,わかりやすい,使いやすい方法(モード)を用いることである
3)個人差(障害を含む)や状況によって,われわれは口話,手話,書字,記号の選択,など様々なモードを使う.
4)日本の携帯電話は,上記のいずれのモードの使用も可能であり,諸外国に比べてもその使用の多様性が普及している.
5)こうしたコミュニケーション機器としての性能的特徴,そして今や誰しもが使っているという社会的状況を考えると,携帯電話は,聴覚障害をはじめとする様々な障害のある人における「情報バリアフリー」を実現する上で格好の道具ではないか.

次にこれまでの研究(1999〜現在)を紹介.

2. 研究例1:静止画像を用いた「居場所・同行者」の報告
 聴覚障害と知的障害を併せ持つ高校生を対象にした,静止画像を用いて,文字入力できない場所や人について静止画像の送付によって,これを報告するためのプログラムを紹介した.最終的には,この手段によって地域の特定の場所で「待ち合わせ」をすることが可能になった.これは第三回国際行動分析学会(北京)で発表したもの(過去日記参照のこと)

3.研究例2:ひらがなカード表を用いた入力の援助 
 ファクスなど,ひらがなを使った書字モードでのコミュニケーションが可能でも,50音の構造とその音韻対応を生活の中で反復しないために,携帯文字メールの入力が難しい成人がいる.ここでは,そのような「ろう重複」の成人2名を対象として,入力援助の道具として「50音表」の効果を検討した.きわめてシンプルな援助機器ではあるが,これが非常に効果的に入力援助となった.携帯ストラップに付帯できるようなプラスティック製の「マスコット型50音表」を自製し,その効果を検討した.

4.研究例3:テレビ電話を用いた非音声複数モードによる機能的言語行動の訓練
携帯電話のもつ非音声モードの最先端機能は,「テレビ電話」機能であろう.このモードは,手話,現物中継,書字したメモの中継など,当該の個人が持つ様々なコミュニケーションモードを時間遅延なく相互に用いることが可能である.
この研究では,はやり「ろう重複」の障害のある個人2名を対象として,「聞き手」が手話の理解が可能か否か,どんなモードを希望しているかなど,相手によってコミュニケーションモードを変更することができるか,といった実証的研究が行われた.

Ⅱ.体験・実習
1)「ぴったり物品を探そう」ゲーム
上記の4.(テレビ電話機能)の研究を,高校生諸君に実際に体験してもらうセッションを行った.
携帯電話を持った高校生が2群にわかれ,一方の生徒が特定物品を示され,それを隣の部屋にいる別の高校生へテレビ電話で送信し,その物品と「もっとも関連のあるもの」を複数準備されている品物からテレビ電話を通じて相談し,ひとつを選んで持っていくというゲームである.物品のセットには,「豚のぬいぐるみ」に対して「真珠」,「ドイツ国旗」に対して「サッカーボール」など,様々なものが用意された.そしてここでは,「ことばを使ってはいけない」という条件が課せられた.
高校生諸君は,自発的に様々な工夫をして相手と相談し,当該物品を選択した.各ペアには研究経験豊富な大学院生と学部生が補助員としてつき,そこで示された「工夫」がどのようなものであったかを意識させる工夫をした.そして,セッションのあと,高校生から,「音声なしでもコミュニケーションができる」「どういう工夫をすればそれがやりやすくなるか」といった具体的内容について,報告書を書いてもらった.
ここで重要な点は,「障害体験」をするのではなく,工夫次第で,携帯電話のテレビ電話機能によって,非音声モードでもコミュニケーションが可能であることを理解してもらうことである.高校生らの報告書も,「相手にわかりやすい形で撮影するにはどうしたらよいかが次第にわかった」といった内容のものが多く,その趣旨は理解してもらえたと考える.

2)街の中で,テレビ電話を使ってみよう
最後のセッションは,テレビ電話を使って(ことばを使わずに),地域の店舗(ケーキ屋さん)で,遠隔地にいる生徒どおして,自分の好きなケーキを選ぶというものである.
1)での工夫をこの場面でも活かし,買い物ができるかという趣旨で行われた.
 
 当日は学振からも担当の方が2名参加され、2)ではケーキ屋さんからケーキを運ぶという大変重要な仕事もしていただきました。ごくろうさまでした。
 そのとき、学振の人に張り付いていた諜報担当のスタッフからの報告。
 「せんせ、学振の人が、あのお揃いのウィンドブレーカーのデザインは誰がしたのかって、聞かれました」
 mo 「ふむ。そんで、なんて答えた?」
 「こういう事にだけ燃えるmarumo先生です、って答えました」
 mo 「・・#・・そしたら?」
 「つづりが違うって」
 mo 「ぐ。 (−−); 」

皆さんご苦労さまでした。
翌日の毎日新聞にも掲載してもらいました。