特別公開講演会(その1)

marumo552006-02-08

 2月8日3時から、オープンリサーチセンター「臨床人間科学の構築」の事業の一環として、以下のタイトルの講演会が創思館で開かれました。コーディネータおよびタイトル設定も武藤崇先生です。
「『連携と融合』を可能とするものは何か?-行動をめぐるQOL拡大のために-」
講演者:原井宏明先生(国立病院機構菊池病院
増田暁彦先生(University of Nevada
William O’Donohue先生(University of Nevada
 
数日前の打ち合わせは、
mut「最初に所長のあいさつしてくださいね。」
mo「英語で?」
mut「そりゃオドノヒュー先生に趣旨理解してもらうなら」
mo「  (-<>-);  」

 当日は、学部の卒論の口頭試問まっさかり。2:50分まで口頭試問が入っていたことに前日に気づく。
mut「だからそこ空けといてって言ったじゃないすか#」
mo「10分あるじゃん」

 当日は、まず原井先生が今回のオドノヒュー先生を招聘した推移の説明(なんのファンドか忘れた)、そして、ネバダ大学で長く勉強し現在インターンをしている増田暁彦先生によるACTの学生教育プログラムの紹介、そして最後にオドノヒュー先生によるIBH (Integrated Behavioral Healthcare) についての講演と続きました。そして、最後にタイトルにもある「連携と融合」というテーマに関連した討論が行われました。
 オドノヒュー先生のIntegrated Behavioral Healthcare のIntegrated(統合)というキーワードがまさに「連携」と関係の深いものです。主催者側が予めオドノヒュー先生らに提示した英語の副題(武藤先生発案)にも、”not eclectic but integrated”(折衷ではなく統合)というキーワードがあります。オドノ先生のIntegratedは、Integrated healthcare is a service delivery system in which behavioral care is coordinated with medical care (統合的ヘルスケアとは、行動的ケアが医療的ケアと「連携して」行うサービス提供システム)という内容を持つものです。
 心理(行動)スタッフの医療への関わりがどのように意味を持つのか、そして現実に医療側からの心理スタッフの協働作業に対する高い評価などが紹介されました。かなりプラクティカルなものです。理論だけでなく実践プロジェクトから構築されたシステムといえます。統合的ヘルスケアの方法としての Stepped care(段階的治療?) の中の、Watchful waitingという、本来これを医療的に治療すべきか、あるいは実は行動的な対処で充分かを見極めるフェイズがある(と理解しました)といった部分に折衷的か統合的か(もちろん行動側からみた)という分かれ目がありそうです。
 行動療法というと、当方勝手に「医学モデル」を想像してしまうのですが、医療との連携の中で行動たる意味も浮き彫りになるという印象を受けました。しかし「行動的に対処できない部分は医療のスタッフにまわす、ということならeclecticなモデルではないか」といった質問をしました。
 「喘息発作が金曜日におこる子どもがいる。それは土日に両親が家で揃うとすぐ喧嘩になるので、それに対する回避行動として生じている」といったエピソードは、まさに行動モデル独自のもので大変興味深いものがあります。「症状があればいきなり治療」といった結核患者への対応のような意味での医学モデルではなく、環境状況などを見極めるために積極的な意味で待つ(wait)ということは、「疾病内容によっては」現実になかなか難しい場面もあるでしょうが、ここで行動側がどの程度ふんばれるか、実効をあげるかが今後の課題でもあり「連携」ということを考える場合、不可欠なものでしょう。
 原井先生のコメントでは、「医療を受ける」「診察をする」といった行動それ自体からケアの意味を統合的に考えていく必要あり、という大変ラジカルなお話もあったことが印象的です。さらに専門性を見直すという方向での議論もあり、当初の企画である「連携と融合」に関しての展開もできたと思います。
 増田先生の、ネバダ大学のACT(Acceptance and Commitment Therapy)の学生教育プログラムに関しては、聴く限りにおいては「ふつうの」伝統的な臨床心理の教育とあまり変わらないんだなというのが予想外の感想でした。ACTの中身までは時間の関係でお聞きできなかったのが残念です。
 前記したような「喘息発作が金曜日に起こるのはなぜか」といった問題に対して、きちんと機能分析的な発想ができる臨床家を育てるための教育というのは、われわれの大学院での臨床系・対人系いずれにおいても重要な問題のひとつだと思われます。

 夜は、K助でおとうふ中心の小宴会。オドナ先生は2メートルの長身。でもベジタリアン。チーズと卵はOKなんですね。
 原井先生、実に明快かつ適切な解説コメントありがとうございました。時差ぼけのまま通訳までお願いした増田先生大変ありがとうございました。K助でいじめてごめんなさい。

 オドナ先生に英語うまいねって言われました。
 Have you ever been to USA ?
そのくらいなら私だってわかります! 
 Yes, but only once.
会って最初の5分間英会話は得意です