障害者自立支援法

marumo552006-05-01

 5月1日は、連絡しましたように出張で休講させていただきました。決して、バイトで講演とかに行っていたのではありません。障害程度区分認定の研修を受けてきたのでありました。
人の講義を聞くという何年かぶりの行動です。日々是新鮮。以下ご報告。守秘義務に抵触しない限り授業などでも紹介していきます。以下の内容は、厚労省のHPなどにもある内容です。為念。細部に間違いなどありましたら、コメント欄へご一報ください。よろしく。


 障害程度区分認定というのは、障害者自立支援法の下で、障害のある個人の「介護給付」と「訓練等給付」に関して、その個人の障害程度を、調査や委員会で決定していく作業です。
 研修は、「市町村において、全国一律の基準に基づき、客観的かつ公平・公正に障害者給付の事務が行われる」ために判定に携わる関係者を対象に行われているものです。

 一次判定では、障害程度の等級が、「要介護」の項目に加わった「行動障害」と「IADL」(ADLに、若干、機能性を加味したもの:調理、配膳、掃除、洗濯、入浴準備片付け、買い物、交通手段利用)を加えた項目ごとに、その介護に必要な「時間」(障害程度区分時間:これは同居・別居などの環境条件とは無関係に統一的時間数で決まる)という定量的スコアで表現したもので決定されます。
 この一次判定の過程では、認定調査員によって得られたスコアをコンピュータ入力したものをもとに対して、(プログラムによって自動的に発せられる)警告コードという項目間矛盾があれば、「医師意見書」を参照にしつつ認定調査員に再確認するという作業を行います。
 「居住の状態とは独立に考える」とか「医師意見書を軸に再検討する」といった原則を聞くと、えらく「医療モデル」っぽいなという印象がある。
 つぎに二次判定として、審査委員会(ここで小生も仕事をすることになるのですが)で、上記の一次判定結果、医師意見書、そして認定調査特記事項のデータから、審査判定を行います。ここで、一次資料で示された障害程度区分の変更も出てくるわけです。研修の趣旨は、この判定の決定と変更について、客観的、論理的な作業が可能となることを目指しているというわけです。細部で間違いなどありましたら、どうかコメント欄にてお知らせください。

 研修は3時間。講義と演習です。演習では、10名程度のグループに分かれて、与えられた事例ケースについての二次判定を行うというもの。医師意見書と特記事項を熟読して、ローデータにあたる調査票を見比べ、その矛盾点や合理的な加点(減点)要素を探して、障害程度の認定の度数を最終決定するわけです。

「では、あと5分ほどで、発表してもらいます」
(どしよ。さっぱりわからない。)

 こういうときの常で周囲の人の様子をさぐる。自分より理解が低い人を探す。が、けっこう皆、マーカーペンで線なんか引いて比較しているようである。そうか、マーカーペンを持っていると頭がよく見えるんだな。しかし、あせるなあ。
 同じグループに居合わせた医者(見るからに医者:どうしてわかるんだろ)が、うがった意見を言うので、「くそ、頭のいいやつだな」と思いつつひたすら低姿勢でやり方を尋ねたりしました。
 さらに便利な判定変更基準マニュアルみたいなものもカバンから出してきたので、「あ、それコピーさせてくらさい」とか、ひたすら依存モード。

 あとで聞いたら、その医者は介護保険以来、この移行作業についても既に習熟している人であることが判明。  
なんだ、そうかい。とわかったところで、この判定システムについて、やっと社会的随伴性の一端が飲み込めた思いもしたのでした。
 各グループで与えられた事例について異なった判定が出されたということはなかったので、一定に、このセッションによっても客観性は保たれたとは言えるでしょう。家族と同居・別居といった環境条件を加味しない判定構造なんですから。
 そうした意味(おいおい、行動的意味がないということか)では、この段階で大きく分かれるはずもないわけです。が、判定理由については、すべての班が同じものを挙げているというわけでもありません。

 判定区分の変更について、どのような内容があればその等級を1ないし2変更してもいいのか、そのあたりは介護保険などでの経験値も作業能率にはずいぶん影響しそうである。システム移行の軟着陸という意味では当然かも知れないが、いまひとつ基準が明確ではないような気がします。
 それと、このような「客観的」判定というものが、もうひとつの支援である「訓練等給付」にどう絡んでくるのか、こないのか。その辺りもいまいち不明確です。どちらかと言えば、「介護給付」の判定よりも、「訓練等給付」の方で、具体的にどのような社会的資源や必要なプログラムを提供していくべきかという議論に興味があるのですが。
 そちらは今のところシステムは相対的に簡単なようです。ただ具体的にどのような資源があり、どのようにそれに結び付けたらいいのか、あるいは、どんなサービスが欠けているのか、「障害者自立支援」というからには、そこが本質だと思いますが、まあ、そうした問題については、今後の作業過程の中で提言(できるか?)していきたいところです。

何かと評判のよくない自立支援法ですが、「判定」という厳しい場面で具体的にどのように課題設定していけるのか、はたまた、「学生ジョブコーチ」に代表されるような大学の地域資源化という「対人援助学」のひとつのミッションにどのように絡めていけるか。

写真は、滋賀県庁食堂での昼食(カフェテリア形式:504円也)
自動販売機の飲み物が微妙に大学より10円安いな。