研究倫理の研究会 坂上貴之先生を迎えて

marumo552006-11-11

 本日、慶応義塾大学の坂上貴之先生をお迎えして、通算4回目の研究倫理研究会が開かれました。参加者は、教員、職員、学部1回生から博士学生、研修生、など実に幅広く、また内容も、どのグループの人にも興味深いものであったかと思います。

 タイトルは「行動倫理学は可能か」で、これは、行動分析学研究19巻の特集の、巻頭論文である坂上先生の論文の副題でもあります。
 
「倫理行動とは集団の維持の促進や集団の解体の抑制に効果を持つ行動」という、実に機能的な定義を仮定してみるというのが、まさに行動分析的倫理研究です。それに抵抗を持たれた方もいると思います。
 質問の時間に、Mutt先生が、
「では、イジメも体罰でも倫理行動ということになるのか」という質問に対して、
「まさにそのとおり」という坂上先生の回答は、まさにクリティカルな質問と回答です。

 つい「倫理行動」にアプリオリにbeutifull behavior を勝手に夢見ているとショッキングなものですが、まずこのような機能的とらえかたをこの問題への「第一次的接近」と置くということが今回のレクチャーの肝ともいえます。

 当研究会の三回目に、私も今回の坂上先生のとりあげた第二次接近としての「対抗制御」に関する部分について、それはすでにどんな対象者においても可能であるとして、いきなり技術レベルで自己決定の研究パラダイムなどを紹介しましたが、行動分析の基本も紹介せずに、いきなりの話を展開して、N先生にもあとで叱られたもんです。
 今回は、行動分析学の基本的部分から、順々に紹介してもらったので、先端などの心理学の門外漢の人も一定理解ができた期待します。

 いずれにせよ、こうした研究会が、すでに「公開性を伴う倫理的課題の作業」であると考えています。研究会の結果として倫理規定ができる、という順番では必ずしもなく、絶えず、こうした本質的議論を「時間をかけて」行える状況設定をつくることが、とりあえずは大学において研究倫理をとりあげる際のメリットでもあり最低の「倫理」でもあると思います。