総合育成支援教育主任研修会

marumo552007-10-17

 呉竹そして北と総合支援校の研修が続いていますが、17日は、表記の育成支援教育主任、いわゆるコーディネータの先生方への研修を、仏光寺京都市総合教育センターでやらせていただきました。
 今年度のツアータイトルは、前期の教職GP以来、「FA宣言とキャリア・アップ」で、京都市の誇る個別の包括支援プランのより機能化を目指した提案となっております。
 
 わたくしの多くの研修の公式タイトルには「応用行動分析」という単語が入っているのですが、あらためて個別の包括支援プラン(あるいは個別の指導計画)と行動分析的枠組みとの関連を考え続けることになりました。
 
 この間、聞いている方は、なんでこの人(わたくし)はこんなに「個別包括支援」の書式やらその運用方式にこだわるのだろうと疑問に思われたかと思います。なかなかイメージした内容を言葉に表現できずに苦しんでいたのですが、というか、自分自身がまだ概念や課題を明確化できていないもの、それは「個別の包括支援」あるいは一般にIEPがいまいち現場に歓迎されていない(と感じられる)理由は何か、どのような枠組みでこのことを考えていけばよいかということです。このことは、応用行動分析に対する理解とも関係の深いものととらえています。

 今いえることのひとつは、IEPというものは、ある時点での「点」であらわされた生徒の状態像(医者のカルテや通信簿)ではなく、また教える側が準備したカリキュラム(あるいは目標設定集)でもなく、ひとりひとりの生徒と先生(や学校や地域)による具体的な「関係」のありかたを反映しなければならない、ということです。しかも、それは単発なものではなく、繰り返しのあるやりとりの中ではじめて見出される生徒の「行動」の変化にあるということです。この「繰り返しのあるやりとり」ということで、はじめて科学的(情報伝達に値する)な記述となり、その記述によって他の人を動かすことができるということです。
 その意味で、個別の包括支援の書式や運用は、例えば1学期に最初と最後の2回、プランの書き込み作業がありそのあいだに所定のカリキュラムがはさまっている、という、大雑把な「プレ・ポストテスト」ではないということです。使用前・使用後の写真を出して、「効果には個人差があります」という但し書きをつける、ちょっとあやしいダイエット食品の宣伝じゃ困るということです。目標と達成されずに残された課題ばかりが記述された個別包括支援では困るということです。

 いうまでもなく、行動分析学での「ベースライン」や「トリートメント期」の記述は、連続的な関係の記述であり、その「変化」(あるいは定常状況)のトレンドこそが科学的と表現するに値する事実なのです(この話は、実は、数年前、非常勤で大学院クラスターに参加してもらった谷先生の説明で目からうろこだったのですが日々是新鮮)。

 このトレンドを表現するグラフの縦軸には、旧来の個人的能力(発達指数やらability)ではなく、「手立て」といった環境設定を混みにした関係の記述としてのストレングス(strength)を書いてみようではないか。そして、このトレンド線の「上方修正」こそが、包括支援としてのわれわれの仕事の内容であり成果なんだと思います。ストレングス=援助つき力、です。いうまでもなくこれこそが「行動」の概念です。って、何度も色々なところに書いてきたことですがこれも日々是新鮮。

 FA宣言とキャリア・アップという、じゃっかんヤクザな表現で(当日は、悪徳辣腕マネージャーになろうとさえ申し上げました)包括支援を語るのは、まさにこの「上方修正」の作業は、環境との関係の中で実現する「恣意的」なものであるということを強調したいがためです。恣意的、つまり障害のある生徒の行く末は、一般の生徒に較べれば実はその意味でFreeなものであり、それゆえ野球選手と同様にそれを果たす上で、さまざまな周囲の協力や、辣腕マネージャーの力が必要だということです。

 最近、あらゆるところで提唱している個別包括支援の「書き換え作業」(=上方修正)という、生徒の「状態」でも「カリキュラム内容の記述」でもない作業こそが、学校(教員の行動)において最も必要な、従属変数だということを伝えたいものなのです。

 キャリアアップとQOLの拡大の2つの概念は、「正の強化で維持される行動の選択肢の拡大」という意味で機能的には同義のものです。会場で、これに関する質問をしてくださった先生に、改めてこの場を借りて感謝します。

 今回の公演でのアンケート集計が出たら、またご紹介していきたいと思います。


写真は、当日のオーディエンスのみなさま。壇上から撮らせていただきました。参加証明としてDLしてください。