「対人援助学会」 準備会

marumo552007-12-22

 09年からの「対人援助学会」の立ち上げのために、今年の9月16日には応用人間科学研究科の同窓会の立ち会げと同時に、準備委員会を正式に立ち上げ全国版の学会組織と運営のための作業に入っています。既存の学範には盛りきれない対人援助に関わる実践や研究についてアドボカシーオリエンティドな、そして「連携と融合」をキーワードとした、関係者が相互に「勇気づける」機能をもった学会にしたいと思っています。

 さて対人援助学会準備会という名称で、すでに数年前から研究集会が、京都のキャンパスプラザで行われてきています。「対人援助」という名にふさわしい最前線での実践を行っている方をゲストに招き、無料公開の形式で会を重ねてきました。

 少しブランクがあきましたが、上記したように「対人援助学会」の正式な立ち上げも決定したこともあり、その運営のための試行・助走期間ということを意識しつつ、ふたたび定期的な研究会を開くことになりました。
 このブログでの報告が遅くなりましたが、去る12月15日に、キャンパスプラザにて、以下のタイトルで開催されました。

●タイトル:在住外国人における言語保障について-コミュニティ通訳の現状と課題-
●演者:飯田奈美子さん(多言語コミュニティ通訳ネットワーク共同代表・衣笠研究機構客員研究員)

 飯田さんは、応用人間科学研究科「家族クラスター」のOGでもあります。また、先日、私が主催した「中国における障害児者教育福祉」に関する国際シンポジウムにおいて、通訳・翻訳業務のプロデュースでも大変お世話になりました。

 
 コミュニティ通訳とは、簡単に言えば、地域における少数派(マイノリティ)な言語を使用する人とその地域の諸組織とのあいだでの通訳業務を行うというもので、中国の残留日本人が帰国した後に、日本の諸機関に相談をしたり、外国人労働者が社会サービスや時には司法機関などとの対応を余儀なくされた場合にその通訳を行うというものです。上記のような利用者の性質上、非英語圏の人が主な対象のようです。
 ここで、「通訳」というのは果たしてどのような機能なのか、とういことが議論となりました。
機械的な字句の置き換え」と「状況も文脈も充分に把握した上での意訳」という対比として考えることができます。少数派の権利擁護という大きな作業文脈はまず既定のものとした場合でも、今度は通訳者があまりにパターナリスティックで指示的なものであっても問題が生じます。まさに「対人援助」という作業における重要な問題点が集約されたような場面といえます。「情報保障」か「授業保障」かといった障害学生支援のありかたの問題とも重なるともいえるでしょう。
 今回の発表をきいて、すぐ思いついたのは、「手話通訳」がコミュニティの中で行政機関などでどのような立場からどのように通訳を行うべきかというこれまでさかんに行われてきた議論です。

 コミュニティ通訳というものが、少数派の人と関係機関というすでにある種の力関係が存在する中で行われることを考えたとき、当事者のauthorshipを担保しつつ、また公正な作業を貫くということを保障するような、随伴性とはどのように配置されるべきか。行動分析学的にいえば、そうした図式での課題解決の方向になりますが、既存の関係組織との雇用関係というのでは、ちょっと問題があります。中村氏もひきあいにだした「独立看護師」のような存在のかたちが確かに理想的ともいえますが、そうなると、利用者が通訳者を自己選択できる、その経済的保障を確立するというのが、ひとつの回答になるのでしょうね。


 次回の対人援助学会準備会は、3月12日(水)の夜を予定しています。演者は、「脱ひきこもり実践グループ」の上田陽子さんです。