Thank you for smoking

marumo552008-06-10

 応用行動分析(9日)の質問に、
存心館のラウンジの外が禁煙になっていますが、喫煙者は減っていません。当初「この場所は禁煙です」のはり紙がありましたが、今は「見られています」のはり紙に変わっています。行動分析学的にはこの問題はどうなんでしょうか?
 というのがありました。

 最近、「見られています」になっているんですか。へえ。
車椅子マークの駐車スペースに一般車両を駐車させないための実験例を紹介しましたよね。ナンバーを書いて専用ポストに入れられるような設定を作っておいたら違法駐車が減ったというやつです。存心館の表示の例も、たんに「この場所は禁煙です」より、具体的に誰かが監視しているかのような「見られています」の方が効果が高いと予想しての変更でしょうね。
 でも、誰もみてないのはすぐにわかるので、ある意味、威力のない「かかし」のようなものにすぐなっちゃいますよね。監視カメラ(っぽいもの)でも設置してあれば別ですけど(オービスの何割かはダミーカメラというのは都市伝説かな?)

 そもそも他の即時的強化で維持されている行動を、同様の随伴性操作のできない条件のもとで「やめさせる」のはなかなか難しいことです。それから「見られています」というのは、ちょっと相互監視環境みたいでネガティブですよね。

 昔、鉄鋼関係の企業から「ハトの糞で鉄材が腐食するので、なんとかハトを排除したいがどうしたらよいか」という質問が行動分析家にきたことがあります。回答は「鉄材を置いていない場所に、ハトのえさ場を作る」というものです。これが、もっともポップで明るい行動分析的な対応だと思います。昨日の授業における、相談所前のステップに座り込ませないようにする際に用いた「ネコのベンチに座りましょう」の方向ですね。
 
 全学禁煙というのは、「えさ場」も「ネコのベンチ」も用意せずに、喫煙者を「撲滅」しようとするものですね。それは無理な話だと思います。少し前まで(今でもあるかな)、歩きタバコをやめてもらうために、「ここで腰掛けて吸いましょう」みたいな看板が随所にあったのを覚えている人もいるでしょう。あれは、心理のTSUゼミの卒論で、「えさ場」を具体的に指示することによって、歩きたばこではなく「座りタバコ」にシフトさせようという試みの跡です。今から思えば、よき時代の平和な研究ですよね。
 「撲滅」というのは、なんにせよ適当な方向であるとは思えません。

 映画「Thank you for smoking」は、なかなか面白いですよ。レンタル屋へ走れ。