日本行動分析学会

marumo552008-08-11

日本行動分析学会が、9日と10日の二日にわたって、横浜国立大学で開かれました。
今年の大きなテーマは「特別支援教育」で、複数のシンポジウムや教育セッションで、特別支援教育や、学校運営にかかわるテーマについて研究者や学校の先生の実践や研究が報告されました。普通学級の中での発達障害のある生徒さんへの対応というのが、多くの発表者の研究対象でしたが、その実践についても、「障害のある生徒」の行動というものが、当該個人とそれを取り巻く環境との相互作用として現出しているという行動分析学的な基本的共通認識については十分に確認されていたという点では、行動分析学会の内容としてふさわしいスタートであったと思います。
 さらに期待されることは、普通学級の中で相対的に浮き彫りになりがちな対象生徒のネガティブな側面や評価への言及を表現することではなく、その当事者たる生徒はどんな手立て(援助設定)によってなにが「できて」、どのように当事者自身や他者からの強化を配置できるかということを、担当の先生がひとり秘蔵してしまうのではなく、それをどれだけほかの先生や、最終的には、地域や企業といったほかセクターのメンバーに情報移行できるのか、ということが、特別支援教育の本質的な役割であろうと思います。

 最後に特別講演をやらせていただきましたが、ここで申し上げたかったことは、2つあります。ひとつは、キャリアアップ(=正の強化で維持される行動の選択肢の拡大)という概念で、生徒の進歩をとらえていくこと(単独能力のボトムアップでもなく、社会が期待するスキルのトップダウン的な決定とジグゾーパズルのようにそれを満たしていくのでもない)。そして、前進的な支援のために、援助ー援護ー教授という3つの支援機能のなかで、今はまだないけど、それがあれば当事者の行動が(相対的にすみやかに)成立する援助設定を同定していくこと、そして、そのプロセスや結果を担当の教員が秘蔵するのではなく、自分自身を含めた同僚や社会的成員に、過不足ない表現を通じて、効果的な援護設定となるべく言語行動をしていくということです。
 シンポジウムなどを通じで、神奈川・横浜の先生かたのすぐれて行動分析的な実践を聞くことができました。「行動分析学」を大学等で習ってきた人がすぐれた特別支援の実践ができるとは限らず、特別支援教育のなかで、当事者個人に対して、前記したような役割を認識し、日常的な責務として実行している人こそが、行動分析家なのであるという印象を強めました。

当日のPDFの資料は、
http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/08J-ABAmochizuki.pdf
  PPのものはHPにおいてあります。