全特連

marumo552008-10-30

 「全特連」って、歳の人には全学連の語感ですけど、全日本特別支援教育研究連盟全国大会です。第47回の全特連大会が京都市で開かれました。わたくしも西総合支援学校での分科会「重複障害の幼児児童生徒への対応」の助言者役で参加させてもらいました。
 就労支援でも個別支援計画でもなく「重複障害」って、面白い分科会に割り振られちゃいましたけど、ま、これも得意技みたいな顔をして福岡と京都の先生による実践研究の「助言」させてもらいました。
 午前中は公開授業とういことで、いくつかのクラスを見学させてもらい、少し、生徒さんにも遊んでもらいました。で、その授業の様子などもふまえて、午後の実践研究発表に臨ませてもらいました。

 私のコメントは以下のようなものです。
1. GivenからGet
 当分科会の協議の柱の筆頭は、「生活の主体者としてより自立的な生きる姿を目指す指導のあり方」でもあることから、「与えられる支援」ではなく「(自らが)得る支援」という、ご存じSkinnerの「対人援助の倫理」に関わる支援目標の原則を紹介。
2. 重度重複の障害のある生徒の支援はなぜこんなに「楽しく」、「やりがい」があるのか。
 重度重複の障害のある生徒さんにはきわめて丁寧なcareが必要であり、それは表面的にはきわめて多くのgivenな関係や対応も強いることになる。しかしそうした中に、生徒さんから援助者あるいは周囲に対する働きかけ(get)がみえることがある。そうした瞬間、われわれは他の生徒さんよりもうれしく感じまた支援の達成感を覚えるのではないか。
3. そうした生徒さんへの支援の達成感について常に気をつけなければいけないこと。
 GivenからGetという関係の、ちょうど中間あたりに、先行する人的・物理的環境刺激に対する生徒さんの反応、という関係が浮かび上がる。様々な刺激に対して生徒さんが反応する、その状況である。さすがに最近は「刺激を入れる」といった表現は聞かなくなったが、ある種の音楽を流すと微笑んでくれるとか、体を持ち上げると声を出してくれる、とかそういう事態にわれわれはおおいに感動する。それまで微少な反応しか示さなかった生徒さんが、そうした反応を示してくれることは大いに進歩であり、関わる援助者を勇気づけてくれるものである。それがゆえに、先生方はその反応に対して様々な応答をさらにしている場合も多く、そのような応答によって、生徒は当該の反応を、単に先行刺激に対する反射的なものではなく、get的な反応(自発的な行動=オペラント)として発展させている場合も少なくない。
つまり、こうした反応は、getへの中途段階として示されている場合もあり、先生方も、前述したように「楽しく」「やりがい」を感じるとうのも、そのgetが創造されるがこそであり、その瞬間の状況設定などを、もっと強調してもらいたいということです。言うまでもなく、そうした事態を特定の先生の間の「信頼関係」などという狭い人間関係に閉じこめずに、他の先生や関係者とも共有して欲しいということです。重度重複障害に対応する「個別の指導計画」の核となる内容はそこにあるのではないかということです。

 もうひとつの点は、同じgetにも二種類あって、重度重複障害のある生徒さんにおいては、身体的苦痛や不自由に対して、その軽減を援助者に求めるかのようなgetです。そうした不自由や苦痛によるサインを見逃してはならないのは、もちろん最重要なことです。
そのための対応には周囲の援助者は他の生徒とは比較にならないくらい労力も資源も時間もそそがれます。従って、この種のgetに充分に対応できるということも、先生方の一種の達成感や励ましになることも当然ではあります。ただ、重度重複というインペアメントの重さの前に、そうした医療的対応にあまりに注意をひかれすぎて、様々な医療的ケアという関係の中であっても(ある種のgiven満載な状況であっても)、常にかいま見える当事者の側から他者への積極的で自発的な行動への対応についての可能性について強調してもらいたいと思うわけです。
文字どおり、生徒の命をかけて、対応の連携や情報共有が必要であり、福岡の先生が発表された情報共有のための「記録」や情報の更新のシステムは実に精緻なもので感服しました。この連携や情報共有のためのデバイスとマネジメントは、そのまま「個別の支援教育」のあるべき姿であると思いました。この医療的ケアのための連携システムの内容に、ぜひ、ひとりひとりの生徒の「getな行動」の成立に関わる内容も、もっと加えていただければと思いました。私と一緒に助言者を務められたT先生もおっしゃってましたけど、教室は、教育の場であり病院ではない、ということを具体的に実現するために、また今回の分科会の協議の柱である「生活の主体者として生きるための指導のあり方」を実践する上でもそのように発展できるものと確信する次第です。

 西総合支援学校の校長先生ほか、関係の先生方、色々とお世話になりました。お忙しい中、中国からのお客さんの対応までさせてすいません。帰りのどさくさに、校長室にあったモナカとどら焼きを、あの部屋の元住人だったASN先生と共謀してカバンに詰めてかっさらってごめんなさい。