言語に障害のある人の代替コミュニケーション

marumo552008-11-07

 11月7日(金)の「バリフリ心理」では、「ひらがなの入力」というのが以外と、知的障害のあるろう者の人では最初は難しいことがあったという事例を紹介しました。ファクスができれば携帯もできるだろう、というのは、われわれ聴者の勝手な思い込みであって、携帯のキー入力というのは、五十音表の構造が音との対応として身近であるからこそできるのであって、日常でそのような経験を反復する機会の少ない人には、なかなか難しいわけです。

 聾学校でも必ずや学んできていると思いますが、うろ覚えというのが、今回の事例に参加した人の状態でした。もちろん、学びなおしによって(つまり「教授」)獲得してもらう方法もあるのですが、ここでは「ひらがなカード」という「おしゃれなストラップ」を携帯につけておけば、それが援助設定(それがあれば「今」できる環境設定)として入力が容易になるのあるから、それを常に持ってもらえばよいや、という話です。実験デザインにABABデザイン(A=カードなし、B=カードあり)を用いるのは、このように「それがあればできる」あるいは「それがないとできにくい」環境設定の効果を同定する場合です。

 もちろん、この入力操作を繰り返すことで、次第に、入力時間や操作数が徐々に減少していっています。援助設定(カード)は、将来的には不要になるとも思われます。しかし、ここで、教授→援助、ではなく、援助→教授、というふうに、ちょっとした環境設定を優先しているところに注目してください。これが対人援助の基本なのです。援護としては、この「ひらがな表」のプラスティックのストラップを携帯の付録に入れてもらえばいいわけですよね。外国人の人にも便利なんじゃないかと思います。

 なお、言語障害のある人に、レストランで携帯の静止画像をつかって注文行動をする、という論文については、以下を読んでみてください。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/hs/publication/files/ningen_12/12_011-026.pdf