ことばあふれ出る教室

marumo552008-11-23

 昨日(22日)の、NHKの「ドキュメント現場:ことばあふれ出る教室」をみましたか?「バリアフリーのための心理学」において、現在、聴覚障害を併せ持つ知的障害者における「コミュニケーションのバリアフリー」を学んでいる諸君には是非視て欲しかった番組です。番組では視覚障害ですけどね。

 数年前の番組の再放送ですが、横浜市の盲学校の授業や生徒の卒業までの様子をドキュメントしたものです。
 その生徒のひとりが番組全体のナレーションもしているのですが、これが実にすばらしい「語り口」でそれだけでも聞き入ってしまうものです。クラスは学年が混合していたようですが、本当に、ことばがとぎれなく生徒からあふれ出る様子は教育というものの理想の状況があるようでした。

 そこで学んでいる内容でとくに興味深かったものが漢字の学習です。ほぼすべての生徒が生まれたときから目がみえず、「点字」が不揮発モード(これは「バリフリ心理用語」で番組とは関係ないです)に使われているわけですが、点字は「表音」文字でありカナも漢字も区別がありません。ところが、この学校では先生が何年もかけて、点字と点描画を使った漢字の「字典」があり、それを生徒が表象的語源などを含めて学習するシステムがあり、そこで学ぶ様子は普通校のように、漢字を単なる繰り返しの中でいやいや覚えるといった状況とは無縁の世界です。その学習風景は、たとえば「馬」という漢字では、馬のしっぽの形態について、ひとりの生徒のポニーテールを皆でさわりながら学習していくなど、すべての感覚を生き生きと楽しい雰囲気の中で学び会うという感じで感動的なものでした。大きな桜の花の模型をさわりながら、顎(ガク)の学習をするときに、みなが、ガク=入れ物=額? という風にこれまで習った漢字を連想しながらその相違を学習していく様子には、これはすごい教育が達成されているものだと思いました。

 卒業記念が狂言というのも実に面白い。これも単に古典日本語の体験というものではなく、聞き手に向かって正面を向いてはっきりと大きな声で話す、という実に機能的な体験を学ぶという目的があるという点でも、この学校の教育に関する見識の高さと力を感じます。そこで太郎冠者(かな?)が「腕を組む」という動作を多くの子が知らず、先生が身体的誘導して教える様子も印象的です。
 卒業式のとき、卒業していく生徒に対して、皆が、口々に習い覚えた漢字の一文字で気持ちを表現します。「寂」(セキ)であったり、しかし「幸」(コウ)であったり。同じ漢字の学習でもこんなに生徒から「あふれだすように」実現していくことができるんですね。
 
 この学校の生徒たちは、小学生でありながらどこかの首相よりもずっと漢字も日本語を知っている、というつまらない感想ではなく、「基礎学力」とか「ゆとり」とかのレベルとは全く異なる、生徒から「ことばがあふれ出てくる」ような教育があるんだということに、今更ながら感動しました。

 いいもん、みさせてもらいましたわ。この番組、なんか賞をもらったみたいですけど、確かに、優れた作品でありました。