刺激等価性(Stimulus Equivalence)

marumo552008-12-01

snowさんの質問にお答えします。

 そこで、質問があるのですが、Sidmanの実験では、音声刺激と対象物を結びつけることと、音声刺激と文字を結びつけることとで、他の結びつきも派生していましたが、もし、音声刺激と対象物の結びつきと、対象物と文字の結びつきというように、Sidmanが行った結びつき以外を学習しても、派生は起こるのでしょうか?それとも、派生が起こるためには、結びつきが決まっているのでしょうか?教えてください。


 シッドマンの研究の場合、刺激と刺激のあいだの選択行動による条件性弁別課題と、刺激によって名前を発声したり、文字に書いたりという選択行動ではなく、対象者の表出言語として反応が出ている場合がありましたよね。刺激等価性の研究では動物も対象にすることがおおいので「表出」までを含まず、3つの刺激と刺激との間の相互の選択行動による条件性弁別課題のみを指して、対称律(A→BならB→A)、推移律(A→B、B→Cなら、A→C)、そして等価律(A→B、B→CならC→A:A→B、A→C、ならB→CとC→B)を示すという場合が基本です。

 Snowさんの例では、「音声刺激と対象物」「対象物と文字」と訓練した場合、「音声刺激で文字」という推移律、「文字で発声」という音声表出が、「派生」になりますが、シッドマンの被験者(あの被験者はいわゆる文字の読めないヒト)の場合には可能だと思います。なお、刺激選択による条件性弁別課題ではなく、ある刺激に対して、音読する、書字をする、といった表出言語行動が行える場合、刺激等価とは別に、当該の刺激の下で(それを選択するという以外の)ある行動が生じる場合、それを機能的等価が生じた、という表現をとる場合があります。Aという刺激のもとで、言語行動や情動的行動が生じていたものが、刺激等価性の手続きによって(それまでこの刺激でそのような行動が生じていなかった)Cという刺激で同様の行動が生じるようになった場合、機能的に等価となった、という表現をとります。

 A,B,Cという3つの刺激項の性質が、音声、視覚、触覚、嗅覚、味覚、といった様々な刺激特性でも、等価性は生じるかというと、全部いけます。味覚については、これから授業でお話する予定です。嗅覚については特殊実験で学生諸君も確認しています。

 というわけで、刺激等価が生じるための条件性弁別の組み合わせ、派生の可能性については、ヒトの場合は基本的には自由だといっていいと思います。
ただし、これから授業で紹介しますが、視覚刺激のみを使った等価性はよかったのに、味刺激を使ってみたら、それは簡単には文字と条件性弁別訓練が成り立ちにくかったという例もあります。そのために、まさに推移律などを利用して、「迂回路」から攻めるという手もあるわけです。これも派生があるからこそできる学習戦略と言えます。


 写真は等持院ネコ(その3?)