キャリア・アップ再考(3)

marumo552009-02-14

 今、障害者就労の支援は、決して障害のある当事者の利益のみを生み出すものではありません。「障害のある市民の・・・委員会」においても、障害者を雇用している企業から「雇用する側のキャリア・アップをもたらす」という事例が再三紹介されています。

 大企業にあっても、最低雇用率を満たすために、つまりは罰則を避けるのではなく、障害者雇用をより積極的に企業戦略に「利用」しているところもあるわけです。もちろん、CSRという用語にもあるResponsibility(=義務)があるんだとうい志ももちろん重要ですが、そういう志だけでは継続性が保てないでしょう。そうしたものだけではなく、障害者が働きやすい環境をつくる作業を通じて、業務分析を改めて促進したり、障害者のキャリア・アップを実現する人事能力を管理職に涵養していく場合もあります。
  ちなみに日本の企業では、4月に新人を一括採用するという方式が一般的なのはなぜ、という疑問がよくあがります。経験を積んだ中途採用をもっと自由に採用したほうが即戦力になるのに、わざわざ「電話の応対の仕方」から教えなければならない新人ばかりを採用する必要があるのか。これは新人自身の特性の問題というよりは、すでに入社している社員に対して「新人を教える」機会をつくるという意味があるのです(「エンゼルバンク」週刊オーニングの先週号)。「教える」という行為を通じて少し先に入った社員自身のキャリア・アップを実現するのである。
 中小企業家同友会のDさんのレストランのエピソードがあります。視覚障害のある人を雇用したとき、先に入っていた知的障害のある社員から、目がみえなくても物がどこにあるかきちんと整理しなおしてみようという意見が挙がったそうです。これなども新人を採用することで、これまでの社員のキャリア・アップが実現された好例でしょう。

 
 写真は、週刊モーニングに連載中の「エンゼルバンクドラゴン桜外伝」(三田紀房著)です。ドラゴン桜は、応用人間科学研究科で必読本として回覧でしたが、就労支援についてはこれも読まないと。学生ジョブコーチメンバーは必ず読んでくださいね。