京都府老人福祉施設職員セミナー

marumo552009-03-04

 人間科学研究所共催で、京都府の老人施設で働く中堅職員の方々に向けたセミナーが、キャンパス・プラザで開かれました。
私の発表のタイトルは「利用者と職員のメンタルヘルス」です。
 http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/roujinshokuin.ppt
 http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/roujinshokuin.pdf

 「メンタルヘルス」というテーマはいただいたものなんですけど、これについては、とかくスタッフの方々の離職、燃え尽き、疲れ、などについて、あくまでもスタッフ個人の「自分自身」の問題として捉え、どうやって自己啓発的に解決するか、といった流れが多かったのですが、ここでは、ヘルス=健康な状態ということは、内なる問題でもなく、また環境の問題(ストレッサー)でもなく、その継続的な関係の問題、つまりは行動の問題としてとらえるものとして話をさせてもらいました。

 不健康というのは、消去、罰、負の強化(嫌悪的なものから逃れる)という形で行動が維持されたり抑制されたりしている状態を示すものであり、それを改善して「健康」な状態にするには、職場における行動が、「正の強化で維持される行動」を成立するためにどのように工夫するかが具体的な課題になります。
 今回は、そのような意味での「ヘルス」の実現を支援する操作、および、ロジックのコアとなる「行動」の原則について紹介しました。ちょっと、あまりに基礎論的で、がっかりした人もいるかも知れませんけど、最近、就労支援でもなんでも「ロジック」(対策に必要な原則的な枠組み)がないところでは、結局、課題ごとにゼロスタートして、どうどうめぐり、という場面に遭遇することが多く、あえてこうしたわけです。
 
 元気になれば職場の課題も解決することができる、のではなく、職場の課題を解決する行動を勇気づける環境を作る、それをすることで初めて元気になるという順序です。もちろん、それは単独で悩んで解決しようと思っても難しいものです。
 
 途中でアンケートに「メンタルヘルスにかかわる課題」を皆さんに書いてもらいましたが、「自分勝手な原則で動いて言うことを聞かない部下」「聞く耳を持たない上司」などなど、どんな職場にも共通した問題ばかりでした。それぞれの職場のロジック(優先すべきミッションは何か、職務が具体的な作業として共有されているか)や、そこで働くスタッフの行動に関するロジック(正の強化、即時強化、社会的悪循環)を、きちんと表現してみることが、結局、その組織の「メンタル・ヘルス」の創造には必要なことだと思います。
 
 経験則、「背中をみて学ぶ」、常識に任せる、といった方法ではなく、成果が上がったのか上がらなかったのかが、わかるような具体的目標を掲げるようなマネジメントを中堅職員の方々にはぜひ展開していただきたいものです。

 高齢の利用者に対するサービスのありかたも、職員自身の行動のありかたも、まったく同じロジックで検討していくことが大切だと思います。