(新)不調な連休(ベーシックインカム・QOL)+応用行動分析資料

marumo552010-05-05

 忘れないうちに、応用行動分析第4回資料リンクします。
PDFは、こちら:http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/10ABA04.pdf
PPは、こちら: http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/10ABA04.PPT


 風邪が抜けなかったり、母親介護体制やら、くるまを早速自宅ガレージのポールにぶつけたりしているうちに、ゴールデンウィークも今日で終わり。上記理由のうちのどれかで会合をドタキャンしてしまった関係各位の皆様、大変申し訳ありませんでした。その間、かろうじて、できたのは合間の読書くらいで、桐野夏生『なにかある』(まだ途中)、「生存学」(2010,vol.2)の特集「労働、その思想地図と行動地図」、同じく「QOLの諸相−生存の質と量」を走り読む。なるほどBI(ベーシック・インカム)という発想があるんですね。これは就労支援にも関わる話で大変面白かった。また就労(労働)行為が「正の強化で維持する」ための基本戦略というこちらからの視点でみても面白いかも。先端研の院生ってのは、こういう風に議論してるのか。それにしても、いつもながら天田先生の司会の手際の良さには感服。

 「QOLの諸相」では、サトウさんが最近しきりとSEI-QOLと言っているのが気になってたんで、(ま、これが今回の読書行動のきっかけだったんですけど)拝読させてもらったわけですが、なるほどね。出発点としては第三者的な「健康関連QOL」に対する批判から始まって、これをあくまで一人称的なものと捉え直す試みとしてSEI-QOLというのがある、と。BIにもこのQOLの議論でも言及されているセン(Sen,A.K.)という人が、当方からするとキーパーソンのようです。久しぶりに勉強しなくちゃという気になりました。「QOLの諸相」はそもそも人間の生の質を「功利主義的」な立場から数値化できるんかい、という批判が基盤にあるようですが、ま、行動分析学なんぞはその功利主義の際たるものだと考えられているんでしょうね。
ここでのQOL批判は、さきにも述べた「健康関連QOL」という範疇の尺度というのが、そもそものQOLのイメージとしてスタートされ、そこで用いられる尺度が当事者個人の「選好」を含んではいても、結局、多数派あるいは一部の他者との比較の上に構成される、というのが批判の概要のようです(たぶん)。
 当方などの、知的障害領域では、ノーマリゼーションというマクロな運動への批判として、個別個人に立ち返った「より良い生(well-being)」の指標としてQOLという概念が発展したという風に認識してきました。それゆえそれは一般論的なあるいは標準的多数に尺度構成が依存するようなADLとは対比的なものとしてQOLを捉えてきたものです。ひとことで言えば、QOLとは、もとより「本人に聞いてみなければわからない」行為の成立の具合という風に捉えてきたわけです。SEI-QOLとは、当事者が「質」のカテゴリーを自らが選べる、ということがみそのようですが、これはこちらの領域でのQOLの議論ではむしろ当たり前じゃないか?と。

 ちなみに、サトウさんは、健康-不健康という一次元でのとらえ方ではなく、また功利主義アプローチではなく「潜在能力アプローチ」(これがセンの主張)を用いて・・・

 潜在能力アプローチにおける潜在能力の概念的意味には、達成可能な福祉の選択肢集合を表すという考え方があり、それは即ち選択肢の幅を示すものである。・・・中略・・・健康者の文化というものと対置する形で、疾病者の文化というものを設定するなら(健康−非健康という一次元で理解するのでなく)、その文化を生きる者自身の選択の新しい生成を見ていく必要がある。SEIQOLにおいて、患者自身が設定するQOLの項目は、自身と環境との設定における機能(function)の新たな生成を捉えられると考えられるのではないだろうか。(サトウ,2010;生存学vol2. p.187)

 って、もろにこれは「行動的QOL」ではないのか? 当方は、この「自身と環境との設定における機能の生成」の具体的方法まで言及してきたわけですが、これがなかなか大変。この作業というのは、「一人称」と表現される場のみでなく、あくまで当事者の生活する場における広義の支援者との関係、その意味での「二人称」的作業として初めてQOLは実現するということなのですが。

 行動的QOLについては、望月昭(2001):「行動的QOL:『行動的健康』へのプロアクティブな援助」、行動医学研究、6(1)、8〜17 参照のこと。秘密リンクも貼ってあったので、リンクしちゃいますと、http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/qol.pdf