中学の思い出

marumo552010-07-18

 歳のせいか、同窓会に関わる色々な打診やご依頼がきます。これは、この歳が相手ならヒマなので依頼を断わる率が低いという随伴性によるのかも知れません。
 今年のだいぶ前ですが、都立小石川高校の紹介記事を新聞に出す、ついては名刺大の広告を出さないかという依頼が来ました。同業の同窓生の方もたくさん出されます、とか、中高一貫になるのでこれが最後の旧制度時代の紹介であるとか、ま、これは、新聞でごらんになってご存知と思いますが、ひとつのビジネスですよね。渋ってたんですけど、「もう最後のお願いです。***円でよいのでどうです?」って、必死のお願いに、つい承諾してしまいました。先月の毎日新聞にのってます。鳩山さんも小沢さんも卒業生ですが、ここに至ってはあんまりセールスポイントじゃなくなっちゃいましたね。

 と、それとは別に、今度は、文京区立六中からPTA誌の依頼あり、と。こちらは丁重なご依頼、ごくろうさまです、ということでお引き受けしちゃいました。以下に一足先にディポジトリー。

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 「中学生時代のかけがえのない出会い」
  師の恩は、あのときでなく「今」
 
 現在、京都の立命館大学で心理学の教授をしています。「対人援助(=助ける)科学」を扱っています。最近は、小中学校でも「教育」ではなく「支援」ということばが用いられます。ここで「支援」という意味は、決められた内容を教え込むというのではなく、一人ひとりの生徒が自発的に「やりたい」と思う行動の成立を助ける、さらに、そのような行動の選択肢を自分で増やすことを助ける、ということです。
 
 六中を卒業して40数年になります。自分の場合はどうだったか。あのころは勉強もクラブも無我夢中、要するにあっぷあっぷで、自発的に好きでやっていた、とはちょっと言いがたいところがあります。
ここで恩師群像。ともかく「おっかない」先生が多かったなあ。例えば、いつも竹刀を持って巡回していた(イメージですけど)T先生(近い年齢の方にはおわかりと思います)。学年全員を講堂に座らしておいて、なんか「活」を入れていただいたような記憶があります。自分の場合は、情けないくらい優等生な「羊」だったと自負(?)していまして、反抗することもなくひたすら恐れいっておりました。
一方、羊になっているだけじゃいかんのだぞ、という事を端々に示してくれる先生方もいらっしゃいました。マルキド=サドこそ最高の思想家だ、と真剣に中学生相手に説いておられた国語のS先生。いやあ、優等生の羊には敷居の高いお話で。そのS先生には、「君のような勉強の仕方では力がつかない」って、かなり本質をつかれて凹んだ覚えがあります。そしてまた、「なんで、あんた、試験前の1週間、クラブ活動しないの? 情けないわね」と指摘してくださったK先生。当時は、学校のルールなんだしと疑いもしませんでした。しかしもっと深く受け止めるべきでした。今、この歳になっても、あいかわらず、あっぷあっぷで自己管理能力なしの自分の行動パターンを思うにつけK先生の言葉を思い出します。
何か自発的に自分で選んでいるものはなかったか。ひとつ思い出しました。昼食のパンを朝日堂にするか小川軒(堂?)にするか選んでいました。それぞれの店の紙袋に印刷されているメニューから選んで、数量を書いて注文するシステムでしたよね。
 
 そこで、また思いだしました。いましたよねえ。その紙袋の欄外に、メニューにもなければ、そもそも存在もしないパン、例えば「ゴジラパン」とかそういうものを書く生徒が。優等生の羊としては、そんなことしたらパン屋さんが迷惑じゃないかと思ってはいたものの、実は、マネしたこともありました。パン屋さんも、それらしい物を入れてくれることがありましたからね。と、ここまで書いて、はたと思ったんですけど、現在、私が専門としている「対人援助」において繰り返し主張していることは、「選択肢を自分で増やすこと」を助けることです。それは、まさに、この「欄外に注文を書く」ということに象徴される事なんですよね。そういえば、当時、創造力豊かな奇天烈なパンを注文していた友人は、成績やら学歴やらとは関係なく、今、充実した生活している人が多いような気がするなあ(年収も多いような気も)。これは、実は本当の「学力」にも関係することだと思います。きちんと研究してみないといけないですねえ。
 
 キャラの立った先生方、たぶん苦労してそれをまとめていた校長先生、そしてパン屋さんに至るまで、みなさん六中であり、わが恩師です。そのことをこの原稿を書きながら改めて気づきました。言うまでもないことですが、文京六中は世界で一番よい中学です。

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すっかり梅雨があけましたね。